「写字生体験会に参加して」 参加学生さんからの感想です!

 文化史学科研究室です。


先日、こちらのブログでもご紹介いたしました「写字生体験会―ゆるっと中世パレオグラフィー教室―」、いかがでしたでしょうか。

写字生体験会に参加した学生さんから感想が届きましたので、ご紹介いたします。


「写字生体験会に参加して」 文化史学科2年Iさん

今回、坂田先生が企画してくださったイベントは、羊皮紙に、当時のものを再現した「つけペン」や「インク(虫瘤インク)」を使って写字生体験ができるというもの。中世の写本の美しさに魅せられている私にとって、これは参加する以外の選択肢はありません!ちょっと緊張しつつ、写字生体験のスタートです。

まずは素材選びから。

牛、ヤギ、羊、パピルスの中からひとつ、好きなタイプを決めます。パピルスは7世紀ごろまでの素材、子牛は最も高価な貴人仕様とのお話しだったので、私はクリームっぽい羊を選択(牛もヤギも白でした)。

ちなみに傭兵の日給が2ペンスだった14世紀、羊皮紙は折丁1組で3ペンス、聖書1冊だと年収超えだったとのお話を伺い、羊皮紙がいかに高価なものであったのかがわかりました。そして「におい」です。今回は一片が5㎝くらいのサイズですが、鼻に当てて嗅いでみるとなかなかの獣臭。聖書一冊分だと結構キツかったのではないかと想像してしまいました。

写字生体験で使用した羊皮紙


さて次はつけぺん選びです。

パピルス用の葦ペンと羽根ペン2種があり、私は中世仕様の、羽が短いタイプを選択しました。羽ペンはガチョウの風切羽が一般的で、一羽に2本ずつしかとれない貴重品だったとのことです。ペン先はナイフで鋭く削ってあります。当時の写字生は毎朝かさず始業前に削ることが日課だったとか。


材料が揃ったところで資料を使って、坂田先生から歴史や字体の違い、本来のペンの持ち方、書くときの姿勢などのレクチェーがありました。とてもわかりやすく、ググッと写字生の気持ちになりきる準備がいます!

私が書く文字は、先生がラテン語文章を抜粋して作ってくださった短冊からおみくじのように引いた(選んだ?)「Post nubila Phoebus」(雲の後は太陽)と、「Fiat lux」(光あれ)です。「この先いいことしかないじゃん♪」と思わせてくれる言葉たちを、9~13世紀にかけて用いられたという「カロリング小字体」で書きます。

羊皮紙には裏表があり、ゴツゴツしているのは毛が生えていた毛穴の跡(そう聞くとちょっと不気味です)で、この面は書きにくくインクもなじみにくいとのこと。もう片側の肉に面していたほうは滑らかで書きやすいと教わり、当然、こっち面へ書いてみることにします。ところが、紙に練習した感覚とは全く違って、ペンが思うようには進みません。また、たっぷりつけたはずのインクもかすれ気味。イメージした美しい写本文字とはほど遠い仕上がりに、羊皮紙に書くことの難しさを一瞬で知ることになりました。ペンの走りに苦労している中、同じ会に参加されていた桃井先生が面白いことをおっしゃるので、笑って書く手は震えてしまうというアクシデント(?)もありつつ、先生同士の会話には大変勉強になることが多く、得した気分でした。

「Post nubila Phoebus」(雲の後は太陽)と書くIさん

体験会から一週間経過して、今は本のしおりになって活躍している私の羊皮紙ですが、ほんのり獣臭は残しつつもインクがすっかり馴染み、いい感じになっています。

貴重な体験をさせてくださった坂田先生、設営等ご準備してくださった文化史学科の助手の皆さま、ありがとうございました。

楽しい時間を過ごすことができました!


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