「歴史ミュージカルの世界」特別補講開催!

文化史学科研究室です。

夏休み期間中の9月25日(木)に「歴史ミュージカルの世界」特別補講が開催されました。

「歴史ミュージカルの世界」(担当:大井知範先生)は総合文化学部の1~4年生(注・2025年度の総合文化学部は1年生のみ在籍)が履修できる科目です。

普段は文化史学科の学生さんは履修することが出来ない科目ですが、文化史2~4年生の熱いリクエストもあり、自由参加のイベントとして特別補講が開催され、文化史学科生と総合文化学部の1年生合わせて33名が参加する盛大なイベントとなりました。

プログラムは2部構成となっており、前半はミュージカル『エリザベート』全編の映像観劇、休憩をはさんで後半は学生プレゼン大会、トークセッション&全体討論会が行われました。

これまでも何度か行われていた特別補講でしたが、学生さんのプレゼンが加わったことでさらに活気あふれるイベントへとパワーアップしました。


『エリザベート』に登場する人物や場面にフォーカスし、史実と比較しながらそれぞれに深い考察を。聞きごたえのあるプレゼンでした。

特別講義を受講して色々知りたいことが沸いてきました。ということで、オーストリア近代史をご専門とされていて、歴史ミュージカルにも造詣が深い大井先生にお話を伺いました。

大井先生にインタビュー!
日本でも皆さんがエリザベートに魅了されており、ミュージカル『エリザベート』のチケットも非常に入手困難となっていますが、史実のエリザベートは本国・オーストリアではどのような評価をされているのでしょうか?
ウィーンでは劇中にもあるように、エリザベートに関するグッズが数多く売られていますが、ミュージカルになる前から人気があったのでしょうか??

シシィ人気に最初に火をつけたのは、1955~57年の映画プリンセス・シシィ三部作ですので、ミュージカル以前から現地でもそれなりに人気がありました。
ただ、この映画は可愛らしいお姫様イメージが強すぎて、リアルなエリザベートからはだいぶ離れていたので、1992年のミュージカル『エリザベート』がより実像に使いシシィを描くことになりセンセーションを起こしたと思います(女性解放時代の流れにも乗って)。
ちなみに、このミュージカル『エリザベート』は当初は劇評家やメディアからものすごい批判を浴びています。
壮絶な酷評の嵐でした。
とはいえ、やはり1992年のミュージカルが爆発的な人気を呼ぶことになったのは事実です。
グッズはもちろん、王宮内のシシィ博物館もこのブームに乗って2000年代に開館していますし、観光資源としてウィーンの街全体が彼女の存在を利用し始めました(大きな収入源に!)。
史実のエリザベートは、一方では美しく強い女性、苦難に立ち向かった皇妃、男社会と闘った時代の先を行く女性としてあがめられる一方で、他方ではやはり、わがままで自分勝手な女性とも見られています。
肯定的にも否定的にも見られる存在ですが、その激動の人生を踏まえやはり美化される傾向が強いといえるでしょう。


なかなか、現地での評価を知る機会が無いので、貴重なお話をありがとうございます。
エリザベートの他にオーストリアで人気のある自国の偉人を聞いたら、どんな答えが返ってくるのでしょうか?

やはりハプスブルクの歴史に対する思い入れが強い国なので、「偉人」といったらマリア・テレジア、フランツ・ヨーゼフがすぐに名前が挙がると思います。
ウィーン市民にとっても、前者はシェーンブルン宮殿を現在の形に整えるなど黄金時代を象徴する人物ですし、後者はまさに今のウィーンの町並みを作った君主ですので、やはり評価は高いと思います。

あとは、音楽家の名前も「偉人」としてたくさん挙がると思います。
モーツァルト、ハイドン、ヨハン・シュトラウス親子などなど。
ウィーン国立歌劇場の音楽監督を長年務めた小澤征爾さんもオーストリアでは有名な人物で、死去のニュースも大きく報じられました。

たしかに、ベートーヴェンもウィーンと馴染みが深いですし、数多くの音楽家の名前が思い浮かびます。さすが「音楽の都」と呼ばれる街ですね。
また、フランツ・ヨーゼフ1世については、『エリザベート』のイメージが強く、彼の政治的功績についてはあまり知られていないように思います。
このように他国の「偉人」については日本語で鑑賞出来る作品のイメージが大きく影響したり、そもそもクローズアップされる人物が限られているなと感じます。現地で作られた映画・ドラマ・演劇などにも多く触れて、視野を広く持てたらいいなと思いました。


さて、最後になりましたが、特別補講に参加された学生さんの感想をご紹介いたします。


受講生の感想
・第1部では「エリザベート」を鑑賞した。私は今まで、講義で断面的に場面を観るだけで、全体を通して鑑賞できたのは初めてだった。そのため、講義で細切れに観た場面を、講義で学んだ背景知識や生まれた自身の考えをもとに鑑賞することで、より舞台に引き込まれた。特に断面的に見ていた場面が一つの流れとして繋がることで、登場人物の感情や関係性をより深く理解できて、新たな視点を持つこともできた。第2部では、第1部で高まった「エリザベート」への感情から、この作品がなぜ長く愛され続けているのか、その所以について考察することができた。自分の考えと合わせて、プレゼンをしてくれた学生の考えや大井先生のお話しによって、さらに考えが深まった。

・自宅でDVDを観ているのと違い、階段教室での大画面は臨場感たっぷりでした!

・授業内で鑑賞したバージョンと全く違う印象を受けました。それはキャストの違いだけでなく、衣装が変更されている点や細かい演出など多くの変化があったからだと思います。「エリザベート」はそうした点も何度も鑑賞したくなる要因なのかなと感じました。またプレゼンについて、もう少し掘り下げて作ることができたのではないかということと緊張して質問に対して上手く受け応えができなかったことに反省しています。ですが大きな教室で何かを発表するという貴重な経験ができてよかったなと感じます。

・「歴史ミュージカルの世界」の履修生の活発なやりとりがとても刺激的で羨ましかったです。

2026年度も「歴史ミュージカルの世界」は開講予定です。興味を持たれた方はぜひ受講をご検討ください!






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