「女性史」スペシャル補講開催!

 文化史学科研究室です。


昨年末の補講期間、学内では「女性史」(担当:大井知範先生)のスペシャル補講が開催されました。

410教室に掲示されたポスター

「女性史」の補講なので参加者はもちろん授業の履修者のみ。ですが、なぜか事前参加登録制となっていました!

授業なのに登録制?不思議な気もしますが、スペシャル補講の教室である410教室に掲示されたポスターを見て納得。そう、スペシャル補講は大井知範先生主催の『ミュージカル「マリー・アントワネット」上映会&トークイベント」だったのです。

「女性史」の授業では激動の近代ヨーロッパを生きた3人の女性に光を当て、彼女たちの生涯を通じて「移り変わる時代を生きる」とはどういうことかを考えたそうです。この3人の女性のひとりがフランス王妃マリー・アントワネットだったのです。そして、マリー・アントワネットについて学ぶ上で教材として使用されたのがミュージカル「マリー・アントワネット」だったのです。

授業では細切れで上映されたそうで、そちらを通して観る!という企画でした。

当日配布されたプログラム
もちろん、観るだけでは授業になりません。そこで、上映後に

  • 質問回答討論会
  • 韓国版の紹介
  • マリー・アントワネットベストソング投票結果発表
  • 大井先生の「推し」
などのプログラムも盛り込まれたようです。
参加した学生さんたちは半日かけてマリー・アントワネットについて学ぶという、とても濃厚な時間を過ごすことができたのではないでしょうか。


では、早速スペシャル補講を企画されました大井先生にその思いを熱く語っていただきましょう!
大井先生よろしくお願いいたします。

***

「女性史」という授業は、文化史学科の歴史学系の講義科目です。女性が主人公の歴史ミュージカルを活用した授業ですが、ミュージカルそのものを学ぶ授業ではありません。ミュージカルを通して歴史を知り、それを糸口に実際の史実を深く学ぶ、そして心で感じたこと、頭で考えたことを自分の言葉で表現する、それが「女性史」という授業のコンセプトです。

つまり、ミュージカルを通して歴史の世界へ足を踏み入れ、心と頭を揺さぶられながら感性と思考の両輪をフル回転させる、新感覚のアクティブ・ラーニングといえるでしょう。

また、ミュージカルというエンターテインメント作品には、我々現代人の歴史観がおのずと投影されています。それゆえ、そこから多くのことが見えてきます。たとえば、過去の歴史や人物は現代社会のなかでどのように思い返され、そのイメージはどのような形で人々に受容されているのか?などです。歴史とは「終わってしまった」過去の話ではなく、現代の我々に未だ何かを語りかけ、私たちもそれに向かって何かを問い続けています。歴史ミュージカルのなかには、こうした「過去と現在の対話」をめぐるエッセンスが凝縮されていると思います。

というわけで、「女性史」の授業はミュージカルをフル活用しますが、しかしあくまで歴史の学びを主眼とした授業です。ミュージカルはその学修のための「ツール」という位置づけです。

とはいえ、この授業を通じてミュージカルそのものに興味を持った、ミュージカルにハマったという声も実に多く聞かれました。授業では「マリー・アントワネット」と「エリザベート」を題材にしましたが、作品鑑賞が目的ではないため舞台映像は細切れで使いました。もちろん、その過程で作品の制作背景や公演の歴史、私なりのミュージカル論も展開しました。それでも、ミュージカルはあくまで「補助教材」として断片的な使用にとどまりました。

それゆえ、授業で扱ったミュージカルを作品としてじっくり鑑賞したい!という声が受講者からかなり多く寄せられました。ミュージカルへの関心をさんざん煽っておいて、後は各自で勝手に作品を観てくださいというのも少し薄情なような気もします。

こうして特別補講という形で何らかの企画を立てようと思い立ちました。当初は、前期中ないしは夏休み中に開催を計画しましたが、残念ながらコロナ禍ゆえ開催延期を繰り返すことになります。

そして感染状況が小康状態の今、まさにこの瞬間を逃してはならない!ということで、12月の補講期間に急遽開催を決断しました。もちろん、参加の義務や拘束のない非公式の緩やかな補講です。成績や単位認定はまったく絡みません。授業で学んだことを踏まえつつも、今回は作品としてミュージカル「マリー・アントワネット」を楽しんでみましょう!
熱く語る大井先生

***

大井先生、ありがとうございました!
続いて、スペシャル補講に参加した学生さんたちからの感想です。(一部抜粋)

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Tさん
女性史の授業を受講し、マリー・アントワネットという人物の生涯や彼女自身の思い、周囲の人物の詳細等といった多くの大変興味深い知識を得ました。講義内では、そのような先生のお話を随所に交えながら作品を分割して鑑賞したため、より深く作品を堪能することができました。今回は一層奥深く細部まで観ることができたように思います。
そして作品の上映だけでなく、質問回答討論会や先生のおすすめの楽曲などといった個人的な内容を知ることができた点においても、充実した上映会でした。非常に有意義な時間だったと感じています。

Iさん
今回の鑑賞会、とても楽しかったです。女性史の授業ではシーンごとに区切って観ていたため詳しくはわかりましたが流れが少しわかりにくかったのですが、今回フルで見ることでそういった面を理解することができました。
また、韓国版の方の演出がリアルなグロさがあり少し怖いと感じましたが、史実はそうなっているためより事実に近いものを見てもらいたいといったことなのかなと思いました。一方日本はあくまでミュージカルであり美しさやドラマ性をもとめるためああいった演出はないのではないでしょうか。

Kさん
授業のなかで観たときには、シーンごとの機能、歌詞の背景を考え、冷静になる時間がありました。その時間があったことでより深い部分で感情が揺さぶられるのですが、通しで観るとやはり「人to人」のところで心情に訴えるものがあります。つい、マリー・アントワネットの栄華と没落の極端を見てしまいがちですが、その間には勿論のこと彼女なりの葛藤があり、変な言い方ですがマリーも生きていたのだと実感します。人生の紆余曲折、その時々の感情の揺らぎに演技と歌がのったとき、どこかで引いている境界線が無くなり、自身の生と並べて登場人物たちの生を考えられる気がしました。

Yさん
東宝のミュージカルは「マリー・アントワネット」が初見でした。
授業で視聴したときはマリーとフェルセン伯爵の感情の機微に焦点を当てていたり、立場の対比に集中してみていました。しかし、今回の通しで見て、ルイ16世がいい味出しているな…と感じました。授業で見ていた時はそこまで彼にフューチャーしていなかったので、二周目で得た目線です。通しで見ると華々しい一幕と現実の二幕の差が分かりやすくて、舞台構成そのもののテンポの良さも感じました。

Aさん
久々に「マリー・アントワネット」を観ました。講義内では人物の動きを見るので精一杯でしたが、今回は大画面で観られたので舞台のセットなどもしっかりと見ることが出来て楽しかったです。ありがとうございました。

Oさん
とても楽しかったです。二回見たことで改めて良さに気づいたり好きになったシーンや歌がありました。
アンケートでは迷ってしまい「あなたに続く道」を選びましたがどの曲もよかったです。今回の上映会を通してマリーアントワネットがどういう人だったのか改めて理解できました。授業の時は先入観も入って受けたので驚くことばかりでしたが、マリーアントワネットの授業を受けてからの改めて見たので、彼女はこうだったのではないかなど考えさせられる上映会でした。

Gさん
作品を久しぶりに観た率直な感想としては、当たり前ですが初見ほどの感動はないと思いました。また、展開がわかっている分、役者さん達の細かな演技に集中できたので、有意義だったと思います。
今回面白かったのが、韓国版との比較です。処刑シーンや生首など、韓国の人はなぜ生々しい演出を好むのか気になりました。
それから、ベストソング投票で人気が分かれたのも意外でした。私は王道を選んだので、他の曲を選んだ理由をそれぞれ知りたいです。

Sさん
授業を合わせると2回目の視聴でしたが、1回目のときと感じ方が違い、ランバル夫人が歌う「神は愛してくださる」という曲が印象的で、ミュージカル「マリー・アントワネット」のなかで1番涙ぐむ場面だと感じました。「神は愛してくださる」の歌詞にある「諦めないで」という言葉や「希望は捨てないで」といった言葉はランバル夫人の芯の強さや生き方が伝わってきて自分に刺さるものがありました。マリー・アントワネットの生涯において親友であったランバル夫人の存在、命の危機にある状況下でも共にいることを決意したランバル夫人にとってのマリー・アントワネットの存在の大きさがよく分りました。

Yさん
授業中に刻み刻みで見ていたものをきちんと通して見ることができたことがまずありがたく、とても楽しかったです。純粋に作品として楽しめたことと、さらに授業で内容や背景についてを勉強した上での視聴会だったため、まったくの初見で臨むよりも深く楽しめたように感じます。作品内で私が特に気に入ったのは、「もしも」を歌うシーンの特に画としての美しさ、マリーが疑似的に作った田園での風景と遠い稲妻の対比、また王妃の断罪やそれ以外も含めた裁判のシーンのひりついた空気などです。それから、かつら屋と衣装屋の二人の登場する場面はどれも賑やかで華やかでとても心躍りました。
また、鑑賞後には韓国版との比較もしましたが、表現の違いなどが国というか、脚本ごとに違うのだというのを改めて感じました。歴代のミュージカルの傾向をリスト化し、それを国ごとに比較するのはとても面白い観方だと感じました。

Sさん
今回の一本通しでの観劇に際し、私が特に注目していたのは子供たちの存在です。自らに与えられた環境の中での最上級の幸せを探求する無意識からの行動と、世の不条理さを何も知らない純粋であどけない表情に、このミュージカルの結末、そしてこの作品の舞台ともなった国のその後の歴史までもを知っているからこそ、何度も胸が締め付けられました。
王妃の自覚が芽生えたマリーが裁判の際に祈った「我が子たちがあなた方を恨まぬよう」という歌詞の「我が子」とは貴族平民関係ない全ての子どもたちに向けた言葉であるように思います。力でねじ伏せるのではなく、言葉で意見を交わし合う、お互いが向き合おうとする、そんな温かい心で満ちた世界の実現を子どもたちに託す、というのは些か身勝手なことかもしれませんが、純粋な目をした子どもたちのその瞳の輝きが失われないことを願うばかりです。

Mさん
今回、ストーリ―ではなく、ステージの演出に注目しながら、ミュージカルを見てみました。そして、二回見て初めて分かったことは、曲はスピーカーから流れていないということです。オーケストラがまさか、ステージ下にいたなんて、最後のエンディングを見なければ、ずっと私、演技の間ごとに、それぞれ違うCDを流していると勘違いしたままでした。
次に、ステージ上の照明の光であらゆるものを再現していたという点です。ステージ上に本物の水を張り巡らすのは不可能だけれども、光の色を変えるだけで、確かに水のイメージを再現できるから、ただ、ストーリー、役者などの表面だけでなく、ステージ上の演出、小さな所にもこだわりが施されているのだと今回、初めて理解しました。
ロアン大司教がマリーに、マカロンを奉るシーンから、この時代にもマカロンが既に存在していたのだと、当時のマカロンに興味を抱いたので、マカロンについて調べてみたら、昔のマカロンは、クリームも付いてない、一枚焼きのものだったそうです。つまり、ロアン大司教が作ったマカロンは、私たちの知っているマカロンではないと分かりました。ミュージカルとは一切関係ないのですが、面白い!と思ったので、こちらに書かせていただきました。

Sさん
女性史の授業では少しずつに分けてみていたため、今回のように一舞台を通して鑑賞することができ、それに加えて、いい音響と集中して鑑賞できる環境が整っていたので、とても面白く楽しい体験ができました。質疑応答・討論の時間も発言しやすく、質問の内容も回答の内容も面白く、聞いているときもすごく楽しかったです。今回の上映会がとても素敵だったので、今後も開催する際は参加したいなと思いました。


いかがでしたでしょうか。大井先生の、学生さんたちの熱い思いを感じてくだされば嬉しいです。

これからも文化史学科の先生方が企画してくださるスペシャルなイベントを随時ご紹介していきますのでご期待ください!

大井先生、ぜひ、第2弾、第3弾もよろしくお願いいたします。


スペシャル補講開始を楽しみに待っている学生たち





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